管理不全物件について③

2021年2月に1F住戸で漏水があった。点検して修理して
19万円ほど支出した(共用部修繕費)。今まではどうし
てきたのだろうか?相談に来た女性の住戸の上階で、3
年前漏水があったという。その上階(3F)が原因だった
という。それは個人支払いで済ませたらしい。通常のケ
ースでは、漏水があったら管理会社担当に一報がくる。
駆け付けて状況を確認する。①原因は共用部か専有部か
②被害箇所は共用部か専有部か③保険対象部分か否か
④止水が可能か否か⑤業者が対応可能か否か
とりあえずそれらが原状回復までの数か月間の対応にか
かってくる為、慎重に判断・記録するのが必要であるが
しかしここではそれらなしで収束するのが普通なのだ。
管理会社担当なし・保険なし・被害と原因判断なしで、
とりあえず業者にたのんだという。個人所有物が、共用
部が濡れなかったはずはない。しかし収束したのだ。そ
してそれが38年間続いてきたというのである。前回記述
した過去の管理費会計収支に、漏水修繕工事という記録
は全く残っていない。しかし住人の記憶には漏水が数回
あったという。保険に入っていない為補償記録もない。
私がマンション管理業を生業にしたときにはすでに、こ
の職種に必要なものがマンション管理業という枠にそろ
えられていた。管理費等・担当者の対応・配管図・保険
必要な業者。それらを組み合わせて必要で且つ合理的な
対応をするのが業務なのだ。とても抽象的な表現で恐縮
だが、近代集合住宅の構造はそれほど変化していないと
思われる。私企業が建て、分譲したマンション第1号は
かの有名な「四谷コーポラス」(1956年~2017年)だが
建物・配管の構造はそれから大きな変化はないだろう。
ここ数十年でそれら管理をしていく段階で、漏水事故等
が繰り返される事で管理業は現在の対応方法を常識とし
て蓄積してきた。今私が対峙している1983年竣工のこの
マンションは竣工当時のままの対応能力で38年間持続し
てきたのだ。最初に書いたが、共用部修繕費で¥19万円
を支出したがそれでよかったのだろうか?このままいく
と漏水等事故は劣化の為多発すると思われるが、管理費
対応で支出するためには徴収額の値上げが必須となる。
これまでの対応を壊して現在・通常の管理の方法を、無
権利者である私が押し付けてしまう事にならないか?
それでよいのか?【管理不全】とその状況下にある物件
とは、現在の管理方法にそぐわない物件であるという事
であり、居住者(権利者)がよければ【管理不全】では
ないのではないのか?
【管理不全】の提議・それらを改善しようとするには、
更に大きな理由・前提条件が必要なのではないのか?

次回に続く 

長野県マンション管理士会  玉木 憲