管理不全物件について④

前回③初めに書いた様に当物件に関わってからたまたま
漏水事故が発生したので過去の対応と比して「これでよ
いのか?」という疑問が生じたのだが、では他マンショ
ンでの問題としてよく挙げられる駐車場問題は?生活音
は?ペット問題は?ゴミ問題は?どう対応してきたのだ
ろうか。同じように管理者(会社担当)が大きく動く事
はなく収まってきたのでしょう。しかしこれらは内部だ
けの問題。高齢化は?修繕問題はどうだろうか。これら
2つの老いは社会の抱える問題である。特に修繕問題は
マンションという高層建築物の社会的存在から大きい。
ここで挙げている物件は前述したように、1983年竣工で
一度も大規模修繕工事をしていない。過去一度も修繕積
立金が設定されていないのだ。規約等にも記述がない。
大規模工事・劣化・災害による崩落等も全く想定されて
いない。一戸建てにおいては空き家が増加してその劣化
による事故・景観悪化が問題となっているが、中高層で
あるマンションで修繕することができない事とは街中で
の生活環境を危険にさらすという状況を生む。また更に
竣工当時からの居住者の高齢化も進み、エレベーターの
ない環境、連絡先のわからない・民生委員の関わらない
状況は今後大問題となる事だろう。管理組合内部設定の
不備は、そのマンション・その住人を現代社会について
いけない存在にしていくのだ。全国的なマンションに
おける問題「2つの老い」は、地域から孤立させ、邪魔
な存在にする要因であり、マンション内での常識・感覚
はマンション外でのそれと大きく乖離させてしまう。竣
工40年でも生活できればよいという感覚になってしまう
他物件(家屋)と比して維持費がかからない安上がりな
住まいだという住人もいる。繰り返し書くが、漏水でど
こを汚損しようが自己解決でよいという感覚にしてしま
う。【管理不全】物件の問題の本質は、居住者の感覚を
変えてしまうところにあるのだ。現在条例等で、新規マ
ンション管理組合を立ち上げる場合は申請が必要として
いる自治体があるという。行政面での規則で最低条件を
【ガイドライン】を決めておこうというものである。
では、すでにあるマンションはどうするか。条例の対象
は新規立ち上げの組合・法に遡及効なし・いきなり既存
管理組合に適応としても反発は必至。再度この前回と前
前回(②③)を読んで頂きたい。私はいつでもこの物件
の会計書面の閲覧・過去の状況説明をさせて頂く。
何よりも40年間の居住者の感覚を変えることは難しい。
日常でこれでよいとしてきた判断に意見できるのか?
関われば関わるほどに【管理不全】は【管理不条理】と
いう認識になっていくのは私だけだろうか。
 

長野県マンション管理士会  玉木 憲