管理不全物件について②

2020年10月15日長野市トイーゴにて、総務省主催の1日
合同法律相談会が開催された。感染症拡大予防の為、
予約制で受付が実施されたがマンション管理士には1件の
相談者が予約された。私が対応をさせて頂いた。
女性が来訪されてお話を聞くと現在お住まいの物件にて
共益費集金がままならなくなったという。20戸の内毎月
支払う住戸が5件前後しかなく、相談に来られたという。
オーナーが亡くなられた後、不動産会社が管理していた
が撤退した。オーナーが管理人として実務していたが、
不動産会社が受け継いで3年経過して撤退。全てをこの
女性に受け継がせて撤退したという。これだけで充分に
おかしな話だが、【オーナー】【共益費】という名詞で
所謂賃貸アパートだと思った。よく相談会には間違えて
相談に来られる事があるのだ。20年程前(実際は38年前)
に分譲で購入したといわれたので再度「分譲マンション
ですか?」とお聞きしてしまった。「そうなんですよ」
とお答えいただいて、心底困っているという事が伝わっ
てきた。以下要約する。①38年前に竣工②分譲で購入
③2Fの男性が管理して30数年間が経過④3年前にその男性
が亡くなった⑤管理費はその男性が徴収管理していた
⑥3年前に不動産会社が管理費口座を引き継いだ⑦その
不動産会社は5住戸を購入して所有していた⑧2019年に
その不動産会社が5住戸すべてを売却して撤退するが、
その際、古株居住者である相談に来た女性に管理を依頼
した⑨管理費未納・滞納者が続出した⑩困って相談に来
られた。 ⑧の引継ぎの際、管理費徴収していた銀行口
座の通帳を渡したが、それまでの剰余金¥50万円(キッ
カリ)を引き渡した。
その後、管理組合の存立が不明なため管理組合口座が作
る事ができず、この女性名義で通帳を作成して管理を継
続したが、共用部水道料金の引き落とし設定が個人名で
はできない為、この個人名義口座から個人名で引き落と
しが行われている。詳細は記録していたため総会資料作
成の際清算することができたが、なんとも不条理な話で
ある。ちなみにこの女性個人が立替えて支払っていた額
は¥3万7千円ほどになった。30年間以上の間に詳細不明
な会計となっている上で、立替払いを余儀なくされると
いうこの状況。さぞや不安であったろうと思われる。
驚くことに、2017年以前の通帳がない。会計状況がわか
らない。竣工当初からの管理者(と思われる)が徴収し
て集められた管理費口座の内容が残っていない。それら
の残額が上記2019年入金の¥50万円であるというのだ。
1住戸平均月額¥3,000円で月¥6万円×12月で年額¥72
万円が管理費収入である。×35年で¥2,520万円。それ
らはどうなったか?わからないのである。竣工依頼、こ
の物件での清掃・修理は全くなかったわけではないが、
計画的な作業はなく、予算もなく、記録もない。しかし
居住者から依頼されたら業者へ発注・対応する者は必要
で、そこに管理業務が生じるとして月額数万円を支出し
たと想定して月額¥6万円を35年間支出してきた。誰の
承諾もなしに。そして2019年に¥50万円が返ってきた。
剰余金として。何がよいのか悪いのか?不正なのか?
やむを得ないのか?どこを切り取りどう判断すべきか?
さてどうしたものか?

次回に続く 

長野県マンション管理士会  玉木 憲